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SIDE STORIES OF BLUERIBBONS

ナイキ製品第一号

NIKE SOCCER / FOOTBALL SHOES

ブルーリボンズ|ナイキ ホースシューズ

TEXT :: TAKATOSHI AKUTAGAWA
PHOTO :: HIROYUKI YAMADA


このシューズは、ナイキブランドとして初めて発売された、まさに最初のシューズだ。NIKE, inc.の前身であるBRS(Blue Ribbon Sports)は、当初日本のオニツカタイガー(現アシックス)の輸入代理店だったが、両社の関係が悪化し始めていたため、BRSは自社製品の開発を始めることとし、そこでまずテスト生産・販売することになったのが、このシューズだった。BRSがシューズ生産をするということは、オニツカへの離反と取られかねないため、この計画は極秘裏に進められた。また当時はオニツカでサッカー・フットボール用のクリーツシューズは製造されていなかったので、万が一この目論みがオニツカの知るところになったとしても、クリーツならば「オニツカ製品でカバー出来ない市場を開拓するため」という言い訳が出来るとBRSは考えたのだ。それが陸上競技を最も得意とするBRSが、陸上用シューズではなくクリーツを第1号製品に選んだ理由だった。

この最初のシューズ、”NIKE SOCCER/FOOTBALL SHOES”の生産は、メキシコで行われた。どういった経緯でメキシコ製になったのかは定かではないが、シューズには馬の蹄鉄を模したキーチェインが取り付けられており、ここに「CANADA SHOES」という刻印がある。調べてみるとカナダに同名の会社があり、またこの会社はメキシコに関連組織があるようなので、BRSがこのカナダの会社にOEM供給を依頼し、メキシコで製造たということかもしれない。またボックスにもシューズにもBRSとは書かれていないので、カナダシューズというのはBRSの製品であることを隠すための、仮のメーカー名だったという仮説も成り立つ。いずれにせよ当時のことを知る、というか覚えている人物がほとんどいないので、どれも憶測の域を出ないのだけれど、ともあれこの蹄鉄型キーチェインが付いていたことから、このシューズはBRS社内で”HORSE SHOE”と呼ばれていたそうだ。

ベロの織りネームには「MUNDIAL 70」と記載されている。これは1970年のサッカー・ワールドカップがメキシコで開催されたからだろう。またナイキブランドの創設は公式には1971年とされているが、時系列に沿って考えると1970年の暮れ頃の可能性が高い。あえて70年のWCを強調していることから考えても、恐らくこのシューズは1970年のうちに発売されたのではないかと思われる。

アッパーの素材は牛革だが、これにPVC(ポリ塩化ビニール)のコーティングを施してあるようで、このマテリアルについてパテントを取得している旨のスペイン語の記述がベロの裏にある。しかし深刻な問題が、インジェクション成型のクリーツソールにあった。メキシコという暑い国で作られたせいか、このソールは寒冷時の耐久性が著しく劣っており、冬になるとかなり高い確率でソールが割れてしまったのだ。そのためにまともに流通した数はごくわずかで、残るほとんどの在庫はセール品として流されるか、処分されてしまったという。

このシューズ最大の特徴は、どこにも「NIKE」と書かれていない点かもしれない。何故ならこのシューズの生産が行われていた時、後にスウッシュと呼ばれるようになるロゴデザインだけは決まっていたものの、まだブランド名が決定していなかったのだ。それはシューズボックスを作る段階になっても決まらず、ようやく出荷の直前になって決定されたらしい。だから「NIKE」という文字は、箱に貼付されたシールにプリントされただけだった。そしてモデル名もサッカー・フットボール シューズという何の変哲もないもの。そうしてつまずきながら、ようやくナイキの第一歩が記されたのである。

生産数量は恐らく一般的な靴工場の最低ロットである、500〜1000足といったところだろう。この数字はスポーツシューズとしては極端に少ないものと言えるが、最初期のナイキでは少なからずこれくらいの生産数のモデルが存在したようだ。しかしホースシューズの場合は前述のようなソールの欠陥があったため、消費者の手に渡ったほとんどが消却されてしまったことは、想像に難くない。


ブルーリボンズ|NIKE MOON SHOES

On 3月-12-2012
Reported by AKUTAGAWA

ブルーリボンズ|ナイキ ホースシューズ

On 6月-12-2011
Reported by AKUTAGAWA